「……………」
暗い気分の中、家へと帰る道のりが重く長く感じた。
家に着くと
当たり前のように颯太さんはいない。
だってここまで走って帰ってきたんだもん。
走ったところで虚しさを拭えるわけではないけれど、身体が勝手に動き走り続けた。
はぁ…と乱れる呼吸は
走ったから息が上がって。
持っていたカバンは無造作にベッドへ投げ捨てた。
(私、何やってるんだろう…)
この先のことなんて、今はまだ考えるべきじゃなかった?
まだ学生なんだから、学業に専念しなきゃ。
行きたかった大学に入学できたんだから。
そう分かってる。だけど……
あんな場面を目の当たりにしたら、余計に集中なんて出来ない。
「紀恵?」
ガチャッと開かれた部屋の扉。
どうやら颯太さんが帰ってきたらしい。
「電気もつけないで…どうした?」
「……………」
電気をつけられたことにより明るくなった部屋。
ベッドに伏せていた顔を上げると、颯太さんは怪訝そうに首を傾けていた。
ねぇ、あの人は誰?
いつから会ってるの?
「……紀恵?」
年下には飽きた?
子供っぽい私よりも大人っぽいあの人の方がいい?
私とは……結婚したくない?
聞きたい知りたい教えてほしい。けど、聞きたくない知りたくないとも思ってしまう。
知ってしまえば、全てが終わりな気がして…
『誰かに取られる前に固い繋がりを結んでた方がいいって!』
『ありえない話じゃないよ?
実際彼氏寝取られた子とかいるし。』
『結婚するとさ、配偶者以外の人と恋愛を楽しめないじゃん』
『今付き合ってる彼女よりももっといい人と出会えるかも。なんて考え始めたら結婚に踏み切れないよね』
「ねぇ、颯太さん…」
私よりもいい人なんて現れないで。
私以外と恋愛しないで。
私じゃない誰かに笑顔を向けないで…。
「私と…結婚したくない?」
颯太さんを早く私のものにしたい。



