その想いを胸に帰路に着く。
最寄りの駅に着き、改札を通ろうとした。
「あっ」
すると前方に見慣れた後ろ姿を見つけては、思わず声が漏れる。
颯太さんは誰よりもスーツが似合い、『完璧』という言葉が似合う人。
言葉通りなんでも出来て、だからこそ家にいる時は本物の執事のよう。
そんな彼なのだからモテないわけがないし、実際にモテているところを目の当たりにしたこともある。
「ねぇ~颯太くん」
「っ!」
そう。今この瞬間だって。
(なっ……なにあれ…)
颯太さんの隣には、モデル並みに綺麗な女の人。
「次はいつ会える?」
ギュッと彼の腕に腕を絡ませるその姿を見て、ドクンッと心臓が嫌な音をたてた。
この人は彼の名前を知っていて、甘い表情を浮かべながら今颯太さんの傍にいる。
その言葉は、以前から会っていることを知らせるような。
(どういう…こと…?)
モヤ…と心に黒い何かが広がっていく。
その人は誰?
どういう繋がりなの?
ホストクラブで知り合った人?
(接客はもうしないって、言ってたじゃん…)
仕事で関わった人であろうと、私じゃない誰かに触れられるということが凄く嫌だ。
けれど颯太さんは今、見知らぬ女の人と共に並んで歩き始めて────。
「そうですね、またそのうちに」
私に見せてくれる優しくて甘い微笑みを、
その人にも見せているのだから。
『結婚するとさ、配偶者以外の人と恋愛を楽しめないじゃん』
そして、さっき言った通り、彼は完璧であって。
隠し事もきっと上手く隠すだろう。
(……聞かなきゃよかった)
男の人の意見なんて、聞かなきゃよかった。
モヤモヤよりも
虚しさが増えていく。



