「紀恵に非がないのは分かっているけど、彼女がホストクラブに行くのはやっぱりいい気がしないな」


「分かってたの…?」


「紀恵があそこに行く時はいつもなにかしら理由があるから。…まあそれがどんな理由であろうと納得できないけど。」





何もかも見透かされて


この人には隠し事なんてできるはずもなくて。






「だから、ショックを受けてる俺を慰めてくれますか?」





見上げると、颯太さんはニコニコと微笑みながら私から何かを待っているようで。



颯太さんが私の異変に気づいてくれるみたいに、私も颯太さんのことを理解してる。



私は緊張を抑えながら、彼の唇に一瞬だけ私の唇を重ねた。





「……もう行かないよ。嘘もつかない、約束する」





カイの練習相手になっていたのだから、あの場所で行われる接客がどんな感じなのか分かってる。


優しく甘いトークで甘やかされ、現実の恋人以上に大切にされるということを。




………でもね、私には必要ない。





「その言葉、忘れんなよ」





愛おしいものを見るみたいに私に微笑みかけると、再び唇を重ねる。





(だって……あんな所に行かなくても、私には甘やかしてくれる人がいるから)





激しく私を求めるかのように深いキスが降ってくる。



颯太さんの服をギュッと掴みながら、熱いキスに身を委ねた。




ヤキモチを妬いた颯太さんはいつもよりも激しく、私は甘いこの時間を身体に刻みつけるようにして味わう。




身を焦がすほどのこの想いを感じながら…。






ホストクラブ ー完ー