「紀恵さん」




コンコンと部屋のドアを軽く叩く。




だけど分かりきっていたとおり、返事はない。




はあ…っと呆れてしまうものの、悪いのは自分。しょうがない。





「お風呂、沸きましたよ」





一言それを告げると俺はその場から離れた。




昨日もこんな調子で、俺がいなくなった後に紀恵さんはお風呂場に向かう。




まあ、今日もその調子だろう。




………なんて思っていたが





「(………?)」





あれからどれぐらい経っただろうか。




一向にお風呂場に向かう様子のない紀恵さん。




部屋のドアは開こうとはしない。




…さすがに無視されるのも限度はある。