再び俺がソファーに腰掛ければ、紀恵はどこか安堵の表情を見せた。
けれど、ギュッと身を縮めるところは変わらず。
そんなに怖いなら無理して観なくてもいいんじゃないか?
そう思うも、観たい欲に駆られてしまうのがホラーというもの。
まあ、分からなくもないけど。
今も尚ギュッと握られたままの服の袖。
彼女は掴んだままだということに気づいているのか気づいていないのか。
目線はテレビの方にあるのだから、たぶん気づいていない。
「紀恵。」
名前を呼べば、またしても肩を揺らし
「な、なに…?」
視線をテレビから俺へと移した彼女は怯えた表情を浮かべてる。
ホント、隠しきれてない。
「おいで。」
少し膝を開き、そのスペースをポンポンっと手で軽く叩く。
「ここにくれば安全だよ」
「べっ…つに怖くないし…!」
その意味を理解したであろう彼女は、少しムキになって強がりをみせる。
けど、俺は知ってる。
「っ……」
少し経てば
躊躇いながらも、
いそいそとこの場にやってくることを。
どうやら恐怖には勝てなかったらしい。
ちょこんと俺の前に座る紀恵が可愛くてたまらず、そっと抱きしめるように包み込む。
その瞬間、ゆっくりと顔を上げた紀恵は俺を下から見つめる形になり、
「ん?」
疑問を伝えるような声を発しながらもチュッとキスを落とす。
「どうした?」
「……何も」
すると縮こまらせていた身体がふっと軽くなったのか、俺の身体に寄り添うようにしてもたれかかった。



