「この映画今日カイが貸してくれたの!ご飯食べてから一緒に観ようねっ」





両手でその借りたDVDを持つ彼女はとても嬉しそうに笑顔を浮かべているのだけど、





(知らないんだろうな、それがホラー要素満載の映画だってこと)





俺はその事実に気づいていながら

ホラー全般が苦手である彼女には敢えて教えず。





「いいよ。」



薄らと笑みを浮かべて了承した。




「それホラー映画だけど大丈夫?」と教えてあげてもいいのだが、






「カイがすっごく面白いって言ってたんだ~」





大学も同じところに通っているらしいソイツとは今でも仲良くやっているみたいで。





「それでカイが───」





気のない相手だからこそ呼び捨てで呼べるのだろうけど、そうであっても気に食わない。




だからこそ、意地悪にもなってしまう。



俺の名前は未だに恥ずかしがって滅多に呼ばないくせにな。





紀恵の苦手なものはピーマン、学校のある日の朝、勉強、絶叫系のアトラクション。そしてホラー全般。




そしてこの映画の題名は『ヴァンパイアと繋がる愛』と、どこかホラー映画っぽくない題名なわけで。





「………………」





その題名に騙された結果





「ヒッ…」





紀恵は小さな悲鳴をあげながら目を細め、ソファーの上で身体を縮こまらせていた。