金目的で父さんと結婚したであろう


家族に愛のなかった母さんを選んで、正しかったと思えるようなことなんてあったか?







我が子のことを1番見てくれていたのは



紛れもなく父さんだったから。






厳格な父さんであっても、息子と娘の学校行事には例え仕事が山積みであろうと一度も怠ることはなく、寧ろ優先して来てくれていた。



リレーで1位をとったことも

テストで100点をとったことも

手を挙げてみんなの前で発表したことだって




全部見てくれていたのは、



「よく頑張ったな」っと褒めてくれる、父さんだった。





『お前は俺の会社を継げ』





その言葉が俺の中で重荷になっていたというのは事実だけど、



俺はそんな父さんに苛立っていたんじゃなくて






『父さんの力になりたい。』






その気持ちがありながらも、いつまで経っても力になれない自分自身に苛立っていたんじゃないのか?





今日だって、俺がこの場所にいるのは紛れもなく麗華からの連絡があってのこと。



仕事が忙しい時の父さんは体調を崩しがち。

それはご飯を食べる暇もないくらいに働いているから。



その度に、いつも河川敷近くにある病院へ数日間入院する。




だからこそ、この辺りは俺にとって幼い頃から知っている場所であって、


良い思い出のない場所。




今回父さんが倒れたのも

仕事が忙しかったという理由だろうけど


その度に、俺はいつも胸がザワつくんだ。




力になりたいのになれない。

少しでも負担を減らしてあげたいのに、俺の覚えが悪いせいで逆に負担を増やしてた。





父さんの顔がやつれていくのを見る度に


俺に教えている暇があるなら休めよ、と。

何度もそう思った。






例え忙しくても、俺達子供を優先するところ。




そんな父さんに負担を増やしていたのは紛れもなく俺。





……それが嫌で嫌で仕方がなかったんだ。






だからこそ反抗して





「アンタのとこになんて行くかよ」





最終的には母さんの元に逃げた。






俺は、アンタのやつれた顔が嫌いなんだよ。




その顔を思い出す度にむしゃくしゃする。





……だって父さんは、




俺たちに対して




とても優しい顔をしてくれる人なのだから。