「おい!ちょ、猫の手!!猫の手しろって言ってんだろ!!」





危なっかしい切り方をしていたからか、涼さんが血相を変えて俺の元へやってきた。





「カズお前危なっかしいなぁ…包丁持ったことねーの?」


「…………………」





答えずにいれば「まぁ男ってそんなもんか」っと、再び切り方を教えてくれる。



けれど涼さんが切ったそれだってお世辞でも上手いとは言えない物。





「あー、早く颯太来てくんないかなぁ」


「………颯太?」


「おう。お前と同じ厨房担当のヤツだよ。アイツ、マジで" 完璧 "なんだよな~1度教えるとすぐに覚えるしさ」





完璧な人なんてこの世にいないだろ。


俺を拾ってくれた涼さんだってどこか抜けてる部分あるし。




………なのに、





" 完璧 "





その一言で俺は" 颯太 "という人が気になってしまった。





父さんが俺にずっと求めてきたもの。



それを持っている人……か。










その人に初めて会ったのは涼さんのお店が出来てすぐの時だった。






「すげぇええ!!!」





とても広いその厨房で、
涼さんと仲良さげに喋るその人。





「おっ、カズ!ちょうど良かった!!」





涼さんは俺に気がつくと
こっちにこいと言わんばかりに手招きされて






「見ろよこれ!フルーツの盛り合わせ!」


「凄い……ですね」


「やばいよな!?すげぇ高級に見える!」






果物を果物と思わせないような、1つの作品のように作り出されたそれ。



本当にこれ全部果物から出来てんの?そう思ってしまうほど。





「やっぱり颯太は" 完璧 "だわっ!!」





涼さんのその言葉に


俺はその作品から目の前の人に視線を当てて





「颯太……さん?」





その名前を呼べば





「初めまして」





緊張混じりの俺とは違い、




"完璧"




見た目からして

その言葉がとても似合う、



颯太さんはそんな人だった。