執事的な同居人







「……………」





真剣な表情を浮かべる私に

颯太さんは眉尻を微かに下げて



緩く、微笑んでいた。





「………同居、解消したことを間違っていたとは思っていません。寧ろ、正しかった。

あなたの事が大切だからこそ傷つけたくなくて、壊したくなくて。俺がいて苦しませてしまうのならそばにいない方がいいと。


だからこそ……同居を解消したのと同時に、あなたとの関係も終わらせるつもりだった。

ご両親が言ってくださるように、あなたはまだ高校生。この先いろんな事があるでしょう。

あなたの事を好きだと言ってくれる方も、俺以上にあなたの事を大切にしてくれる方も。

この先、いろんな人に出会っていく。


……俺はそんな紀恵さんのこれからを邪魔しないでおこうと決めました。


あなたが幸せならそれでいい。幸せな人生を歩めるなら、そうであってほしい。


俺だけに囚われず、色んな人と出会って恋をして、毎日が幸せだと思える人生であってほしい。


………それが、俺の願いなんです。」





徐々に身体が冷たくなっていくのを感じた。



寒いからとか、そんなんじゃない。


心が冷えきっていく感じ。




覚悟は決めていたはずなのに、実際言葉にされてしまうと、なかなか受け入れられない…





「………………」





そっか、と。



呟くことも出来ず、私は黙って顔を俯かせた。



心が次第に暗く沈んでいくのを感じる。


そっか、だから冷たいんだ。





冷静に颯太さんの話を聞いていただけあって、涙は出ない。




けれど、底知れぬ悲しみに誘われてる。




この先、私がどう足掻こうとも颯太さんの決意は変わらないだろう。




颯太さんの目が、とても真剣なのだから。




思い詰めた表情はなく、


そう決めたと言わんばかりに

しっかりと私の目を見て逸らさず。





彼は自分の心と向き合ってそう決めた。




だったらもう私が口出せるはずは……








「ですが。」








ギュゥッ…と無意識にスカートを握りしめていたらしい私の手を、




颯太さんは優しく掴みあげて










「どうも俺は…あなたを手放せそうにない」



ギュッと手を握られた。