執事的な同居人







「………………」





チラリと颯太さんの横顔を盗み見る。





目は、合わない。


彼はまっすぐ前だけを向いて運転してる。





(運転中はよそ見すると危ないもんね…)





そう分かってはいるけれど、



でも、なんだろう。



久々の再会なのだから、その瞳にもっと私を映して欲しいなんてーー…






「…………っ、!」





その願いが届いたのか


今、颯太さんとしっかり目が合っていて


まさかの事に動揺すれば





「よそ見すると危ないよっ…!!」


「停車中なので。よそ見じゃありません」


「ほ、ほんとだ…」






(信号赤だったのか…)



とても柔らかく微笑むその顔に見惚れながらも顔を背けた。






2人っきりの車内。


少し近い距離。





(うわ、なんか、緊張する…)





こんな状況初めてなんかじゃないのに、胸がドキドキと大きく鼓動し始める。






「あ、会いに来るなら連絡してくれれば良かったのに…!」





その緊張を紛らわすために慌てて話しかけてしまうのだけど…





「そうですね。すっかり忘れていました」





信号が青に変わり


車が再び動き始めた少し前



視線を颯太さんへと当てる私は、ずっと私を見ていたらしい颯太さんと目が合うわけで。







「あなたに話さなければならないことばかりを考えていたので」







とても、真剣に。


私の目をジッと見て逸らさず。





………私、この目知ってる。





同居を解消しようと言った、あの時と同じ目。


何かを決意した時の目と同じ。






「あ……そ、うなんだ…」





その途端、脳内では嫌な想像ばかりが思い浮かんでしまう。





私…簡単についてきてしまったけど


もしかしたら今日が颯太さんと会える最後の日になるのかもしれない。





颯太さんが何を決意したのか




それがどんな結果であれ、

覚悟を決めないと……