───────────颯太side
家までの帰り道。
いつも足が重くて仕方がない。
『自分のしたことをあの家で噛み締めてろ』
石沢さんのその言いつけは俺を苦しめるもの。
家に帰れば紀恵さんと過ごしたあの時を嫌でも思い出す。
一緒にご飯を食べたことだとか
一緒にテレビを見たことだとか
一緒に料理をしたことだとか
良い思い出もあれば
紀恵さんの怯えた瞳、強張った表情、震える身体。
そして恐怖でいっぱいの彼女から流れる涙。
その事実は思い出したくないこと。
だけど、
この家に踏み入れれば
毎日のように
その醜い事実が脳裏を過る。
そして、今日も。
あの家に着けば、
俺は苦しみでいっぱいになる。
家に近づき大きく溜め息を吐いた。
ポケットから鍵を取り出し、覚悟を決める。
それは毎度やっていること。
そうでもしないと俺は
苦しみに心が押し潰されそうになるから。
それが嫌ならとっとと引っ越せばいいだけの話。
だけど、引っ越さないのは
石沢さんに言われた通り自分のした罪に向き合う為だとか、そういう理由でもあるけど
「…………、……は?」
いつもその先に踏み入れたくない扉の前に
今日は、
「紀恵、さん…?」
キミの姿が。
その名前はもう口にしてはいけない約束だ。
だか、突然の事に、咄嗟に呼んでしまった。
彼女は俺の姿をその綺麗な瞳に映すと
「おかえりなさい!」
満面の笑みを浮かべて俺に微笑みかけた。
「っ、」
俺がこの家から引っ越さない理由
それは、
キミとの繋がりを失くしたくないからだ。



