颯太さんが家を出てから数時間が経った。
未だに彼は帰ってきていない。
頭を冷やしてくるってそう言ってたけど……どこに行ったんだろう。
(………帰ってきてくれるよね?)
このまま、帰ってこないなんて、ないよね?
颯太さんがここに帰ってきてくれない。その事実ほど怖いものはない。
「っ…………」
夢で見たように、私はあなたと楽しそうに微笑みながら暮らしていきたいの。
パタパタと玄関へと急ぐ。靴を履いて、颯太さんを探しに行こうとした。
その行動は今までによくあったこと。
彼を探さないと落ち着かない。
それほど、私は、颯太さんに依存してる。
ガチャッと玄関のドアを開ければ、
「あっ……」
目の前に、彼の姿があった。
その顔はどこか気まずそうに。
ちょうど今帰ってきたのだろうそんな彼を見て
「……っ、紀恵さん…」
真正面から抱きついた。
「もう…どこにも行かないでっ……」
ギューっと抱きしめれば、感じるのは颯太さんのぬくもり。
「颯太さんが家にいないと…怖いっ…」
「っ、」
私は颯太さんを強く抱きしめたまま。
けれど、
彼はそんな私に触れようとはせず
「紀恵さん……」
切なげに私の名前を呼ぶだけだった。