執事的な同居人





────────颯太side






家に着いたのは20時頃。




重たい足で久しぶりに帰ってきたその場所。……ただ、中に入るのは少し躊躇ってしまった。






中には紀恵さんがいる。



その事実が、家の中に踏み入れるのを躊躇ってしまう理由。






顔を見れば、きっと、


俺はまたキミを抱いてしまう。




ルールを決めたのは自分自身だというのに、守れていないのも自分自身。……呆れる。






「………………」






グッと気持ちを固くして、どうにか手は出さないように心に決めて中へ踏み入れた。






中は、シーンっと静かな空気が流れている。



紀恵さんの靴はあった。


だから中にいるはずだが……?






リビングにも、彼女の姿はない。





けれども、


俺の瞳に映るのは



テーブルの上に置かれた複数の紙。

点数が書かれているそれ。






だから、考えなくても分かること。





その解答用紙は全て赤点という文字が似合わないものだった。






素直に「すごい」という言葉が脳裏に浮かぶも、この点数を取れたのは紀恵さん自身の努力でもあって、それから───






嫌でも浮かぶのは、アイツの顔。紀恵さんに勉強を教えていたであろう、アイツのおかげでもあるということだ。





俺、じゃダメだった。





アイツが勉強を教えたから取れた点数。






「…………………」






────クシャリ。





気がつけば、解答用紙を握りしめてた。






赤点を免れたんだ、だったらもうそれでいいじゃないか。………なのに俺はどうしてこうもむしゃくしゃするんだ。






" 俺 "ではないアイツが教えた。





そして、それを選んだのは紀恵さんだ。








リビングのテーブルの前で立ち尽くす俺。その場にガチャッ…とドアが開いたかと思えば、







「あ…!おかえりっ!!!」






俺の顔を見て、


今の俺の気分とは正反対のように目を輝かせて満面の笑みを浮かべる紀恵さん。に、






「………ただいま」






抑えていたものが壊れた気がした。