「ほら、こっち向けよ」
「っ、」
後悔しても、もう遅い。
悔やんでも悔やんでも
もう意味が無い──。
両頬を片手で掴まれて、
無理矢理上へと向かされた。
頬に伝うのはきっと涙。
颯太さんは
誰かに触れられた私に
もう優しく微笑んでくれない気がする。
ボウっとそんな事を考えた。
目の前の男は抵抗しない私にニヤリと笑う。
気持ち悪い。
ほんと、気持ち悪い。
私は颯太さんのぬくもりが欲しかっただけなのに。
抵抗して殴られるのなら、いっその事蹴ってやろうか。殴られる前に動けなくしてやれば……
そう思って私にキスしようとするこの人を蹴り上げようとした、が。
「なあ、邪魔。」
路地裏の奥から
「そこ、俺の喫煙所なんだけど」
暗闇の方から
「ヤるならホテル行けよ」
聞き覚えのある声。
そして、知ってる顔。
「カ、ズさ……」
だから、必死に名前を呼んだ。
言葉が震える。
いや、もう、身体中が震えてる。
蹴ろうとしていたけど
実際のところは仕返しが怖くて怖くて、
「…………は?」
私を見て目を丸くさせるカズさんに
心の底から安心感を覚えた。



