「紀恵」





スッと唇に指を当てられて






「口、開けろ」



「ま、またピーマン入れるつもり…?」






怯える私に対して

颯太さんは口角を上げて不気味な笑み。






「もっと良いものを入れる」





その表情でさえもカッコイイだなんてー…








「───んっ、!」





触れるだけの軽いキスが落ちると、




滑り込むようにして


私の口内を犯す何かに


身体がビクッと反応した。




今までに無い感覚。

熱い何か。

息が出来なくて苦しい…。







「ふっ、んぅ…」





身体中の力が抜けそうになる。



颯太さんの服を握っていないと、今にも崩れ落ちてしまいそうで、必死にしがみついた。





そんな私に気がついたのか



激しいキスは止めようとしないまま






「っ!?」





颯太さんは腰に手を回し


服の中に手を入れると


私の身体を支えるようにギュッと抱き締めた。





再び素肌に感じる颯太さんのぬくもり。






脳内も

口内も





颯太さんでいっぱいになって



他のことなんて考えられなくて








ピンポーン






っと、来客音が部屋中に鳴り響かなかったら







「はあっ……ッ、」







一体私はどうなっていたんだろう…。








その音が鳴ってから、やっと激しいキスから解放された。呼吸が乱れて必死に酸素を取り込む。






「ピーマンよりも、良かったでしょう?」






なんでこの人は乱れてないんだ…



私は身体の力が抜ける1歩手前だというのに。






まだ話せる状態じゃない私を見て

颯太さんは満足気に微笑む。







「紀恵さんは呼吸を整えててください」







軽く私の服を直すと



颯太さんは私を置いて玄関へ。






身体を支えてくれる人がいなくなってしまえば、私は崩れるように床へと落ちた。







(な、なにあのキス……)







いつもと違う、大人なキスだった。




頭がふわふわして

その人のことしか考えられなくて

熱くて溶けそうな






そんなキス。







思い出せば、身体中から火が出るんじゃないかってくらい熱い。



鼓動が鳴り止む気配なんて一切無し。








寧ろ、速度上がってるような…。