「カズさんは、そ……お兄ちゃんと仲良いんですか?」





危ない、危ない…


また颯太さんって言いそうになった。





「うん。同じ厨房担当だからね」


「それにしても…スーツで作業するんですか?」


「ああ、今日だけね。いつもは私服にエプロンだよ。今日は接客側に欠員が出たからそっちに回ってくれって言われたんだ。


………できればしたくないんだけどね。涼さんにはお世話になってるから断れないけど。」





深く溜め息をついた彼は本当に嫌そうな顔をする。





「いつもなら颯太さんが接客側に回ってくれるんだ。でも今日は颯太さんがいないから俺に回ってきたんだよ。」


「お兄ちゃんも接客してるんだ…」


「たまにね。本当に稀にだよ。こうやって欠員が出た時だけヘルプとして外に出てる。ちょうど昨日出てたんじゃないかな?」





だから外に颯太さんの写真も貼られていたんだ。



今になって、パズルのピースのように1つ1つ分からなかったことが当てはまっていく。




そして、その接客相手が、きっと麗華さんだったんじゃないかと思った。





「………で、妹さんは何しにここに来たの?遊びに来たわけじゃないよね?」


「あっ……えーと、ですね…」





隠すようなことじゃない。



カズさんも颯太さんが今日いないことに不審に思っているはずだから、知って欲しいと思って全て説明した。



今日会ったばかりの人にベラベラと喋るのは気が進まないけれど、協力してくれたら、と思って。





「ふぅん…颯太さんがお持ち帰り、ね…」


「涼さんが言っていたんです。もしかしたら、その女の人の家にいるんじゃないかと思って…」


「その人の名前は知ってるの?」


「あっ、はい。麗華さんっていう人です」





その瞬間




ピタリと固まったように見えたカズさんは、目を丸くさせていて





「………どうかしました?」


「あっ、いや………」






「おーい、カズ~?」






話の途中で涼さんがやってくると、





「そろそろ持ち場ついて。

あっ、紀恵ちゃんもそろそろ戻ってね」


「はい。今行きます」


「す、すみません!!」





私も慌てて言われた場所に戻った。