ああ、また


どうしたんですか?って、
笑われる気がする…。




勢い任せで言ってしまったことに少しの後悔を感じていると、




私の想像とは違って


振り向いた彼の顔は、どこかツラそうで。




少し顔を歪ませたかと思えば




(えっ…なに……?)




颯太さんの手が私の頬に軽く触れる。





________そして、











「っ、!」







チュッ、と





唇に柔らかい感触が落ちた。




それは本当に一瞬で





(今、何が……)





夢かと思った。



だけど胸がドキドキとうるさいことから、これは夢じゃない現実なんだ、ということを知る。



唐突のことに驚きを隠せない私は
呆然としてしまって





「…………、……行ってきます。」




そんな私を横目に見ると


彼は再び私に背を向け、行ってしまった。





……キスについては何も言わずに。





呆然とする私はその場から動けなくて




(まって、どういうこと、)



頭が、混乱する。




颯ちゃんって呼んで

振り返った彼に



キスをされた。




「っ…………!」




理解してしまうと、
落ち着いていたものが激しく鳴る。



身体に熱が帯びて……熱い。




「えっ、ええぇぇぇ……」




パタリとドアが閉まった音。


その音と共に、家の中は静けさが増す。




聞こえてくるのは自身の胸の音で、




(これは、いつ、おさまるの……)


………おさまる気がしない。