冬の春


――が、目覚めた時、ほんのり空が白々として、シーンと静まり返っていた。


「んっ! ここはどこ?」


キョロキョロと見回すと、停車中の電車の中だった。

閑散とした車内は、三人の乗客のみで寒々しい。

私は窓の外を眺めてみると、近くに山が見えた。


…………え?
ここは、どこ?

どうみても都会の街には見えない風景が広がっていた。

山からカラスの鳴く声が聞こえてくる。


私は、車両の端に座っているおばぁさんに近づいていった。


「あのぉ、すみませんが、ここはどこですか?」

「ん? なんだい?」


どうやらこのおばぁさんは、耳が遠いらしい。

今度は大きな声で話しかける。 


「ここはどこですか?」

「ここ? コイノミ駅だよ」


おばぁさんも大きな声になる。


「へ? どこですか、それ?」

「あんた、分からんのかい?」

「えっと……」

「この電車の始発駅だよ。あんた、大丈夫かい?」


おばぁさんは心配そうに首をかしげた。


「えぇ、大丈夫です」



私は礼を言うと、ホームに降り立った。

また、寒さで身震いする。


「すっかり寝ちゃったんだなぁ……飲みすぎたかな」


私はカフェでビールジョッキを二杯がぶ飲みして、グラスワインを四杯飲んだ。

ふらつきながら駅まで行き、改札を通ったまでは覚えているけど……


どうやら知らない電車に乗ってしまったようだ。