冬の春


「気持ちいいですねぇ」


と、ニコニコ顔で話は続く。


「こんな綺麗な朝陽が見られたら、今日もいい一日になりますね」


と言われたが、私は答えなかった。


私にはいい一日なんて来ないわよ!

それに、あんたみたいな男とかかわりたくない。

図体でかいし、武骨な感じで、私の好みのタイプじゃないから。



男は、作業着にダウンのジャンバーを羽織り、軍手をして二枚のズダ袋を引きずっている。

唯一、手編みのマフラーだけはブルーのグラデーションでお洒落だった。

それがなければ、三十代後半に見える。


それにしても、ズタ袋は何んなの?

と思っていたら、武骨な男は私の視線に気付いたらしい。



「あ! これ、気になりますか?」

「……いいえ、別に……」


本当は気になる。


「こっちはゴミで、こっちは流木です」

「はぁ……」


男はニッと笑った。


「木ですよ。漂流してきた木」

「それくらい分かりますよ。で、なんのために?」

「アハハ、リサイクルですよ」

「ああ……」


なーんだ。

掃除のおじさんかぁ。


「朝からご苦労様です」


と素気なく男に言う。


「え? ああ、いいえ。好きでやっていますので」

「そうですか……」


話は終わったんだから、あっちに行ってよ。

とは言えないけど、一人にして欲しかった。