彼がよいしょと立ち上がり資料室から出て行く。
その姿を、私は慌てて追いかけた。
時をさかのぼって夕方、私は補習が終わった6時ちょっと過ぎ。
理々乃ちゃんとあーくんのキスシーンを見てしまい、資料室で泣いていた私に
駆けつけてくれた、音怜くん。
たくさん、たくさん泣いてしまい、音怜くんのブレザーの袖を涙で濡らしてしまっ
たけど、彼は全く気にしなくて。
嗚咽を漏らす私の背中を、何度も優しい言葉と共にさすってくれた。
「辛いことがあったんだね、もっと泣いていいよ」
「つぼみちゃん、よしよし」
「俺がずっと側にいるから、安心して?」
私は、音怜くんが開けた、資料室の扉からそそがれる電灯に照らされながら頬を
濡らしてたんだけど。
1時間も泣き続けて、さすがに落ち着きを取り戻した私。
気が付くと窓の外は真っ暗で、スマホの時刻はいつの間にか7時になっていた。
「あ、ありがとう、音怜くん」
「どういたしまして」