「いやー、川高遅くなった! どうだ進み具合は?」
私は慌てて、落としたプリントを拾おうとしたけど、なぜか机の上に置かれている。
え? い、いつの間にっ!
…………、音怜くんが気が付いてくれたのかな?
彼のさりげない気遣いに、胸が温かくなる。
「おお! けっこう出来てるじゃないか。でも、まだ時間あるな。チャイムが鳴ったら居残りは終了ってことにしよう。次ははちゃんと授業聞くんだぞー?」
私は、「はっ、はい」と控えめに返事をした。
夕陽のせいで、さっきのドキドキで赤くなっているであろう顔を隠せてよかった、
と思う私であった。
しばらくして予鈴が教室に流れる。
「今日の補習はここまでだ。川高、けっこう暗いから気を付けて帰りなさい」
「せ、先生もありがとうございましたっ………」
私は席を立ち、ペコリと頭を下げる。
ガラガラと戸が閉まる音と同時に、現れたのは音怜くん。
彼は、スクバを肩にかけながら、私に「んじゃ」とだけ言って、スタスタと教室を
でて行く。

