「───、誰がー、羨ましいってー?」
…………え?
カバっと上半身を勢いよく、私は起こす。
きょろきょろと辺りを見回したけれど、教室にはやはり私の人間以外誰もいない。
でも、確信はあった。
席を立ち、ベランダに足を踏み入れると──。
「──、音怜くん、どうしてまた、ここにいるの?」
私の視界に入ったのは、ベランダから景色を悠々と見渡す音怜くんの姿。
ブラウンの髪がふわり、ふわりと風になびく。
そして、色素の薄い瞳がこちらを見た。
「そんなの俺の勝手でしょー?」
どくん、と心臓が脈をうつ。
な、なに……? 音怜くんを見ただけなのに、この変な感じは………?
黙りこくる私に、彼は何かを投げて来た。
私はハッとして、それをキャッチする。
見ると若干冷たいそれは、缶のお茶だった。
「間違って、自動販売機のボタン押しちゃってさー、俺、苦いの苦手だから、
それあげる」
「え……? あっ、ありがとう」
ぎゅっと手の中で握りしめているお茶を見ながら、私はそう言った。

