思わず目を逸らして、私はこう答えた。
「ごめん……、私、まだ忘れられない人がいて………、だから今はまだ返事は返せない」

保留した私に対して、ちょっと残念そうに眉の端をさげる音怜くんだった
けど──。

「分かった、つぼみちゃんが俺のこと好きになってもらえるように努力するから。でも、俺、あんま待てない性格だから、そこん所は覚えといてよ」

音怜くんはそれだけ言うと、保健室をあとにした。

ふうっ……と、ため息を吐いて、未だにドキドキしている心臓を手で押さえる。
まさか………、音怜くんが告白してくるなんて、現実味が無い。

ほどなくして、養護教諭の先生が戻って来たのはいいんだけど、先生に、「あら?    顔赤いわよ?」と、指摘されたのは言うまでもない。