じれじれ王子と心の蕾。





私は、「なあに?」と、理々乃ちゃんを見る。

「“リリィ”って呼び方、やめてほしいんだ」
「へ? も、もしかして、前々から気に入らなかった!?」

「ううん、そうじゃないの。つぼみには、幸せになってほしいから、その気持ちを
込めてこの名前をプレゼントしたいの!」
「えーっと、でも、私が幸せになるなんて………、そんなのなくてもいいよ?」

さらりと、そう理々乃ちゃんに言うと、彼女は珍しく真剣な表情に変わる。
「つぼみ、もっと欲張りにならないと、幸せ逃げちゃうよ? だから、今日から
貪欲に生きること! 分かった!?」

リリィ……、じゃなくて理々乃ちゃんの勢いに飲まれて、思わず「う、うん」と
返事をしてしまった私。

すると、きゅ~、とお腹を締め付けられるような痛みに襲われる。

「あの、お手洗い行ってもいい?」
「あっ、そう。つぼみ、行ってらっしゃい!!」

私は、生理用品の入ったポーチを持って、教室を飛び出す。
トイレに続く廊下を走っていると──、ぐらりと、頭が回る感覚がした。