音怜くんは、ちょっと意地悪で何を考えているのか分からない。
けど、優しくしてくれて本当は私を、大切に思ってくれている。

「つぼみちゃん、なに、にやけてるのー? いいことでもあった?」
「えっ!?」

私は慌てて、お店のガラス張りにうつった自分の顔を見る。
口角があがっていて、確かに音怜くんの言う通りの顔になっていた。

は、恥ずかしいっ………!
思わず顔を両手で覆う。 

「ねぇ、なに考えてたのー? 俺にも教えてよー」
そう言いながら、ぐいぐい迫ってくる音怜くん。


“音怜くんのこと考えて、にやけ顔になっていました!”なんて、口が裂けても言いたくない。

「あー、えっと、そ、そう! 音怜くんとどこか遊びにいきたいなー、なんて
思って!」 

「どうしてそう思ったのー?」
音怜くんは私の顔を不思議そうに見る。

「だ、だって、私、仮の彼女だし。付き合っているフリの理由にぴったりなんじゃないかなって!」
「あー、それはいい提案かもねー、でも………、」

…………?