慌てて玄関で靴を履き替えていると、お母さんがニタニタしながら現れる。
「今日も、あのイケメンくんと一緒に行くのかしら~? ほんと仲いいわね~」
「も、もうっ! あんまり絡んでこないでよっ…………!」

そう言いつつも“仲がいい”という言葉に対しては、否定しない私であった。


私は、ガチャリと玄関を開ける。
ブラウンのふわふわの髪に、光るピアス。
モデルさんみたいなスラっとした脚に、色素の薄い瞳。

「つぼみちゃん、おそーい」
「お、遅くはないでしょ! まだ8時前だよっ!」
私はそう反論しながら、白い柵を閉じた。


「俺が早く、行きたいのー、つぼみちゃんと一緒にいる時間減っちゃうでしょー」
「へ? え、それってどういう意味───、」
「んじゃ、行こ」

音怜くんの発言で私の言葉はいとも簡単に遮られる。

聞き返そうかと思ったけど、あえてやめておいた。
だって、これが音怜くんだから。

私たちふたりは並んで歩く。