私の視界に現れたのは、紛れもなく音怜くんだった。
音怜くんは、相変わらず、ヘラヘラと笑っている。
けど、どことなく顔に怒りが滲みでていたのが分かったのは、私だけではなく、
三人の女の子たちもそうみたいで。
「ね、音怜くん………!!? いや、これは、その……」
言葉を濁らせながら、おろおろする女の子達。
特に、あの茶髪で、目つきが怖かった女の子は、今度は瞳を泳がせている。
そして諦めたのか。
「───ちっ、二人とも行くわよ」
そう言ってパタパタと足音を立てながら、去って行った。
「音怜くん、ありがとう………!」
「………」
「音怜くん?」
「ごめん、俺、気づかなくって………。顔、痛いよな?」
そっと、彼は私の頬に手を当てた。
「ううん、音怜くんが来てくれたら、痛いのどこか飛んでっちゃった!!」
「一応、保健室、一緒に行こ? ………俺が手当してあげるからさ」
私は、ドキンと高鳴る胸を抑えて、音怜くんと保健室に向かったのは言うまでも
ない。