「そーいえば、つぼみちゃん、入学式の日の自己紹介んとき、“長所は、どんな困難でも諦めないことですっ……!”って言ってたよねー」
「えっ、あっ、それは……、わ、忘れて………!」

また、音怜くんに笑われちゃうっ、と思った私は羞恥心をこらえながら、声を絞り出した。

すると、以外な質問が飛んでくる。

「“つぼみ”って名前の由来って、つぼみちゃん知ってるのー?」
「へ? ううん、お母さんからは、“響きが可愛いから”という理由だけで、そう
つけたとしか、聞いてないけど………」
「ふーん、じゃ、ちょっとこっち来て」
「え、音怜くん!?」

彼に手を引っ張られて向かった先は、中庭にある近くの花壇だった。
音怜くんは、人差し指をさして一輪の花をちょんと触った。

「この花、名前わかんないけど、いつ来ても(つぼみ)のままなんだよねー」

咲きほこる色とりどりの花畑の中に確かにそれはあった。