「しゅ、手芸は得意だけど……、服まで作れる自信ないし、それに文化祭で、
みんなの前でファッションショーするんだよ。それがどうも苦手意識があって………」

「………ぷはっ、確かに消極的な、お前が考えそーな事だねー」
私はムッとして頬を膨らませ、そっぽを向く。
その瞬間、若葉が風でこすれる音がした。

「でもさ、つぼみちゃんのドレス姿とか見て見たいな、俺」
“ドレス姿”というワードもそうだけど、それ以上にドキっとしたのは、私を
“ちゃん”付けで呼ばれた事だった。

「どーしたの? 急に黙っちゃってー」
音怜くんは、自覚が無いのか不思議そうに顔を覗き込んでくる。

「ななな、なんでもないよっ……!」
なにか話題を変えようと思って、私はこんな事を言った。
「そ、そういえば音怜くんって、コンタクト付けてるの?」

「………は? なんでそんなの聞くワケ?」
急に彼の取り巻く空気がピリピリとしたものに変わる。
あれ………? 急に機嫌が悪くなったような………。