そう言って彼は元居た場所に戻ってく。
赤いマッシュヘアの中性的な髪型をした朝陽くんを見る度に、ちょっとだけ寂しいと思ってしまう。

昔は、朝陽くんは黒髪で、他の人から女の子に間違われてしまうほど可愛かった。
幼稚園生の頃、背も私より小さくて、よく『つぼみちゃん』って抱きついてきてくれた。

『今日も、つぼみちゃんに合えたっ………、嬉しいっ!』
『あーくん、苦しいっ、もうちょっと力緩めてっ………』
『あ、ご、ごめんっ……!』

家が近所で、幼なじみだった私たち。

でも、その関係は、小学校低学年までしか続かなかった。


中学校も同じところに通っていたけれど、同じクラスになる事は無くて、距離が
みるみる内に空くのを感じた。

そして月日は流れて、今日、高校の入学式。


ひとりだけ、赤いメッシュの髪の男子がいて、誰だろう? かっこいいけど何だか
ちょっと怖そうだな………なんて思ってしまった。
だけど、その人があの“あーくん”だってことは、自己紹介のとき知る事となる。