「ち、ちがっ………!」
私は慌てて否定しようとすると、音怜くんが耳元でささやく。
「それとも、そんなに俺に会いたかった?」
「~っ、」

私は思わず片耳を押さえて、彼から素早く距離をとった。
ドキドキと心臓がうるさいのは気のせいだ、と自分に言い聞かせる。

メルアドを交換したあと、私は念じながら音怜くんの隣を歩き始めた。
そう、フリ! あくまで私は音怜くんの、彼女のフリをしているのっ!
本物の彼女じゃないっ! 

朝陽くんに未練がある私の気持ちに付け込んで、こんな状況になっただけ!!

「そーいえば今日、バスケ部だけ朝練と放課後あるんだよー、顧問の先生が
ちょーっと面倒臭い性格の人でさー」
「へー、そうなんだ、大変だね」

確かに道端を見回してみるけれど、私たちと同じ制服の人はいない。

歩いているのはサラリーマンか、他校の高校生くらいだ。

「私、1年の頃から、全然部活入ってないんだ」
「どーして? 被服部とかあるじゃん」