私は、手を前に突き出して、ブンブンと振る。

「そ、そんなことないですよ!!? う、恨んだりとかはしてません……、けど」
「けど?」
「ちょっぴり、見捨てられた感じはあります………、小さい頃、よくなついてくれた萩山くんの印象が強くて、寂しいっていうか………」
「じゃー、決まりー」

音怜くんは立ち上がって、私を見下ろす。

「今日から、川高は俺の仮の彼女。よろしくね、つぼみちゃん」
つつつ、つぼみちゃん!?
身体の熱が一気に上昇する。

「ちょ、ちょっと話しを先に進めないでくださ──、」
「敬語も禁止」
「え、ええっ!?」
「彼氏なんだから、当たり前でしょー、じゃ、明日から実行ってことで」


私が「ちょっと待ってー!」と言う前に音怜くんは、さっさと裏庭から出て行った。

わわわ、私が音怜くんの彼女のフリ!?
む、無理だよ、絶対!!
音怜くん、何をかんがえているのかさっぱり理解できないよっ………!

私はしばらくベンチでひとり、頭を両手で抱えていた。