私は慌てて首を横に振った。
「ううん! そんなことないよ! えと、音怜くんは何しに来ていたんですか?」

ちらりと、彼が持っている、ピンクのピニール袋を見た。
「んー、俺はシャーペンの芯がきれたから、それ買っただけ」

シャーペンの芯………?

そういえば音怜くんって、頭よかったんだよね。
だって、高1のときから、学年テストで、上位に常に名前が書かれていたのを私はハッキリと覚えていた。

音怜くんはだるそうに、授業を受けてても、先生からあまり注意されない。

私は真面目に勉強しているつもりなのに、先生からの問題はきちんと答えられた
試しも無い。
みんなの前だと緊張して、うまく声がでないのが理由なんだけど…………。

「音怜くん、勉強してたんですか?」
「そうじゃなかったら、テストでいい点とれるわけないでしょー」

くるっと背を向けた音怜くんは、それだけ言うと、逆方向に歩きだす。

「あ! 音怜くん、ちょ、ちょっといいですか?」
「なにー? 俺、早く帰りたいんだけど」