すると、ぽんっと音怜くんの手が私の頭に置かれる。
彼は、ふわりと笑ってこう言った。

「そーいう風に、怒れるじゃん。なら安心した」

ドキン、と心臓が高鳴る。
私は、それを誤魔化す為に、慌てて口を開いてこんな事を言った。

「わ、私ね、萩山くんと幼なじみで、小さい頃から片思いしていたの。でも、萩山くんに、フラれたのもそうだけど、昔を忘れられたのもショックで……、私にとっては大切な思い出なのにね、あはは」

すると、午後の授業開始のチャイムが鳴る。

「あっ、教室戻らないと!!」
ふと、音怜くんの手元を見ると、いつの間にか空になっているお弁当。

「お前、食べないからさー、俺が間食しちゃったんだけどー」
「ううん、いいの! 音怜くんもお昼食べてなかったんだよね?」
「うん? まー、そうだけど」
「それなら、よかった! 代わりに食べてくれてありがとう、音怜くん!」

私は、立ち上がり、彼に手を振って裏庭をあとにした。

「………ほんっと、お人好し」

彼が、裏庭で1人、そんなことを呟いていたのを知らずに。