すると、音怜くんは突然、笑い出した。
私は、訳が分からず、頭にクエスチョンマークを浮かべる。

「あははっ、ムードメーカー以外はもう既にあるだろ」
「………へ? 私、優しくもないし、明るくもないですよ?」
「………は? 本気で言ってんのー、それ?」
「え、う、うん」

音怜くんは私の反応を見て「マジか……」と呟いた。

「あ、あの、どうしたの? 音怜くん」
沈黙がつづいて、全く喋らなくなった彼に私は声をかける。

「あのさぁ、川高」
「な、なぁに? 音怜くん」

やっと音怜くんが口を開いてくれたので私はホッとした。
でも、その気持ちも束の間───、音怜くんはこんなことを言った。

「あいつには、近づかない方がいいよ」
「えっ? どうして?」
「川高はチョロいから、すぐ、もてあそばれそうだから」
「なー、なんですか、チョロいって! わ、私そんなに男の人の言う通りに動く女じゃありませんからっ!!」