ぽたぽたと流れ落ちる涙の数々が、芝生に後も残さず吸い込まれていく。

このままじゃ誰かに見つかってしまうと思った私は、立ち上がり教室に戻ろうと
したけど、視界にあるものが目に止まる。

この花───、最初、音怜くんと見た時はつぼみだったのに、咲いたんだ。
葉っぱはちょっとギザギザしていて、花は淡いピンク色に染まっている。


かわいい───。
ちょんと、指で花をつつく私。
頑張って、周りよりも遅くても自分を咲かせた、この花が急に愛おしく、なんて
力強いんだろうと思ってしまう。



それに比べて私は───、弱い。
この花のように私も強くなりたい。

そう思った瞬間──、私の心の中で何かが弾けた。

私は、音怜くんが好き。
この気持ちに揺らぎはない。

そして、私は歩きから、走りに変わる。
音怜くんと、理々乃ちゃんに会いたい──。
会って、二人に自分の口から本当の気持ちをちゃんと言おう。

あと、先生方にも説得しなきゃ、悪いのは音怜くんじゃなくて、勝手にかばった
私なんだって。