だけど、私のその切ない願いは彼には届かなかった。

「そーだな……、つぼみちゃんは俺のせいで傷ついた。俺、今めちゃくちゃ
落ち込んでるから、それも、いーかもな」


力の無い、か細い音怜くんの声。

すると、理々乃ちゃんはにっと笑って、手を差し出して来た。
「じゃあ、今日から私たち、恋人同士ってことで、いいわよね?」
「………」

音怜くんもなにかまだ迷っているみたいだった。

理々乃ちゃんが出した手を無言でじっと見つめる彼、だったけど。

───すっ。
あっ、そんなっ………!

音怜くんはぎゅっと理々乃ちゃんの手を掴んで握手してしまったのだ。

私はその場から、思わず逃げた。

そして、たどり着いたのは連絡通路の花壇のある場所。
私は芝生の上に体育ずわりになって顔を伏せて泣いていた。


私、好きだったよ───、音怜くん、あなたのことが。

思い出すのは、ふわふわした髪に、ピアスをつけた彼の顔。

無表情な顔も、笑った顔も、意地悪な顔も、全部、全部好きだった──。