斎藤さんは、もとから若干目じりが吊り上がっているんだけど、私を見ては、
ますます目つきが悪くなる。
彼女は腰に手をあてて、かなり不機嫌そう。
しかも表情からは、ふつふつと怒りをあらわにしている表情が読み取れた。
「ちょっと川高さん?」
ドスの利いた声に、私は一歩あとざすった。
私はハッとして、負けるな自分! と念じる。
「なにか、用ですか? 斎藤さん」
私はあくまで笑顔でそう言い返した。
「川高さんって、バカよね。あのときの約束忘れたのかしら?」
「ううん。覚えているよ」
それを聞いた斎藤さんは、「はあぁ!!?」と私に抗議する。
「さっさと、音怜くんのこと諦めなさいって、アンタに言ったわよね!!?」
「うん、でもごめんなさい。私、その約束はできないって思ったの、今日」
私はごく普通に言ってから、下げた頭を上げる。
「斎藤さんには悪いけれど、私も本気で音怜くんが好きなんだ」