じれじれ王子と心の蕾。



彼女は表にはださないけど、裏ではすごい努力しているんだと私は思う。

「じゃ、私そろそろ行かなくちゃ!」
理々乃ちゃんは、私の方をパッと見て、そさくさと去っていった。


頑張って、理々乃ちゃん…………! と心の中で思ったあと、私は再び男バスの
様子を伺う。

今は10分間の休憩タイムになっていて、設置されたベンチに座って、ボトルに
口をつけて飲む音怜くんの姿がいた。

他のチームのメンバーたちも汗をタオルでぬぐっている。


「音怜先輩、タオルどうぞっ!」

なんとも愛嬌のある声に思わず見ると──、小柄で小さくて可愛い女の子が音怜
くんに、近づいていた。

“先輩”だから、おそらく一年生なのだろう。

その子の髪は、私みたいな地味な真っ黒じゃなくて、明るめのブラウン。
長さは鎖骨につく程度で、ハーフアップなんかにしちゃっている。


私はそっと、自分の黒髪に触れてみた。

昨日、音怜くんとデートする為にゆるく巻いた髪は、既に元のストレートに
戻りつつある。