キョロキョロと辺りを見回すと、確かに誰もいない。
あんなに、ペンギンを見る為に来た人たちは、私たちの視界からきれいに消えていた。
するりと、音怜くんの手が私の太ももを直に触ってくる。
「あっ………! んんん………!」
“そんなところ触れないで”と言おうとした瞬間、私は彼に唇を塞がれた。
「ね、音怜くん、やっ、だ、だめ………!」
なんとか逃れようと試みるけれど、私が唇を離すと、音怜くんがまたキスしてくる。
何度かそれを繰り返していく内に、意識はとろんとしてきて、もう頭もぼーっと
してきた。
そして、やっと音怜くんがやめてくれると、私ははぁはぁと肩で息をする。
「も、もう音怜くんのバカ!」
ポカポカとゲンコツで彼の胸を叩いて、講義する私。
だけど、音怜くんは笑って、耳元でささやく。
「俺の気持ち、伝わったでしょ?」
あまりにもあまーい声色だったから、私の体温が一気に上昇する。
「…………今日だけだからね」
私は、ムスッとしながらも赤い顔でそう言った。