そして、バスに乗り込んで、15分後。
私は、音怜くんにこっちこっちー! と手を振りながら動物園のゲートに向かう。
ゆっくりとした足取りで、音怜くんはくすくすと笑っていた。
「つぼみちゃん、まるで小学生みたいなノリだね」
「うん! だって音怜くんとデートなんて夢みたいで………!」
感動していると、音怜くんは不思議そうな顔をした。
「俺の言ったことに対して、怒らないなんて珍しいね」
私は、確かに……! と一瞬思ったけど、こう答える。
「なんだか嫌味なところも音怜くんらしいからかな?」
「なにそれ?」
ははっと、笑う音怜くんは、『川原動物園』と踊っている文字のゲート前まで、
やっと来てくれた。
入口の横にあるチケット売り場に私が並ぼうとすると、音怜くんは「ちょっと、
待って」と、手をぎゅっと握られる。
「音怜くん?」
「チケット代は俺が払う。てゆうか、今日は俺に全部任せて」
「えぇっ!? わ、悪いよ、そういうのは………!」