「あら? 今日は起きるの早いのね」
「え、あっ、うん」
洗面所に続く廊下でバッタリとお母さんと会う。
ぎこちなく返事する私。
実は、家族には、音怜くんとデートしに行くと伝えていないのだ。
昨晩、音怜くんから急に電話があったのも、そうだけど、私はなんだか恥ずかしく、言う勇気がでなくて。
「じゃ、つぼみ。リビングに朝食出来たから、冷めないうちに食べなさいね~」
「う、うん」
洗顔して、歯磨きしたあと、朝ごはんを一人で食べた。
お父さんも、仕事が休みでまだ寝ているっぽくて、助かった。
私は、自分の部屋に戻り、引き出しをあさる。
今度はヘアアイロンを取り出して、テーブルの前に正座。
地味な黒髪の私は、少しでも華やかに見せたいと思いながら巻いていく。
そして、10分くらいで髪をふわふわにセットした。
まるで、音怜くんみたいだな、ふふっ、と思っていると、ノックも無しに、
いきなりドアが開く。
その正体はお母さんで。