「そうか? まぁ、そんならいいんだけど」
朝陽くんは、複雑な表情を浮かべながら、後頭部をガシガシとかく。

「じゃ、じゃあまた明日学校でな、川高」
「うん! バイバイ!」

私は朝陽くんに小さく手を振って、見送った。

誰もいなくなると同時に私は、その場に崩れ落ちた。
ちゃんとチャックをしめてなかったみたいで、手を放したスクバから、こげ茶の
紙袋が顔をのぞかせる。


即座に頭に浮かんだのは、理々乃ちゃんの顔。

私は彼女を1ミリも恨んではいない。

だって、大好きだった、あーくんに思いを伝えることが出来たのだから。


でも、涙は止まってくれなくて。
「ううっ……、う~………」

そのまま私は、ずっと顔を覆って泣き続けていた───…………。


その情けない姿を、あの人に見られていたなんて、知る(よし)もなく。