「俺の本当の親は、物心つくまえの俺を施設にあずけて、会いに来てくれたことは
なかった。だから、俺、本当の親がどんな人なのか知らないままなんだよねー」

淡々と話す音怜くんだったけど、どことなく元気がない口調で言う。


「俺、この家の子供になってから、10年経つけど未だに息苦しいって感じる」
「………うん」

「親といっても他人だし、すげー気ぃ使って疲れるんだよ。いい子のフリしなく
ちゃいけないって、自分に言い聞かせてなんとかやってるけど、正直疲れる
んだー」


学校で、ふといつまでもベランダにいた、音怜くんを思い出す。
あぁ、だから、そこで時間を潰していたんだ。
家に帰りたくないから。

「それに、生まれつきの俺の色素の薄い目は、本当の親ゆずり。小さい頃はよく
周りからからかわれた。お前の親は目が黒いのに、なんでそんな目してるん
だって」

音怜くんは、苦笑いしてたけど、それが余計に私の胸を苦しくさせる。
でも、私は思い切って、音怜くんにこう言った。