じれじれ王子と心の蕾。





その瞬間、音怜くんの手は顔から離れて、スマホをポケットから取り出す。
ふぅ、良かった…………。

「あれっ? 今日、雨降るなんて、天気予報で言ってないけど………?」
「あー、今スマホ見たら、曇りから豪雨注意報に変わってたよー?」
「えっ、そうなの!? じゃあ早く帰らないと──、」

そう言いかけると、真っ黒の雲におおわれた空が、ゴロゴロと音をたてる。

そして──、ポツポツ降ってきたかと思えば、いきなりザーーーッ!!と
強まる雨。

「わわわっ! どうしようっ……! 私、折り畳み傘もってないよぉ………!」

すると、ぐいっと音怜くんに手を引っ張られる。
スクバを頭の上に持ち上げて傘替わりにした音怜くんが、「こっち!」と言って
向かったのは───。


真っ黒で、横長の長方形の形をした、けっこう大きなガレージハウスの前。
横にある自動車の車庫の、車が目についた。


「えーっと、もしかしてこのウチって…………?」
「ん、俺の家だよ」