じれじれ王子と心の蕾。




私は、音怜くんの顔をまともに見れないまま、こくんと頷いた。

「私、萩山くんと幼なじみだったの。可愛くてよく(なつ)いてくれていて、
弟みたいな感じだった」

音怜くんは、黙って私の横顔をじーっと見る。


「けど、月日が流れるにつれて、私と萩山くんの距離は遠くなっちゃって。萩山
くんは、昔のこと忘れちゃったみたい。自分を忘れた人がずっと好きだった人
なんて笑えるよね」

空笑いして、誤魔化す私。
すると、音怜くんがおもむろに口を開いた。

「だったら、忘れちゃえよそんなヤツ」
「………へ?」
「さっさと諦めて、俺にしろよ。俺なら絶対、つぼみちゃんを泣かせたりしない」


私の顔を手ではさんでくいっと、強制的に音怜くんの顔の前に向けさせられる。
こ、これってもしかしてっ……!?

「だ、ダメだよ! ここ、外だよっ!?」
「暗いから、誰も見えないよ。大丈夫」
「だ、ダメったら、ダメーー!」

───、ぽとり。

私の頬に冷たい雫が、空から落ちて来る。