『早めに行動に移さないと、明日の朝には彼女連れて登校してくるよ、萩山くん』
ええい! もう、こうなったら───。
「は、萩山くん、今ひとりなんだね? みんなは?」
「ん? 俺、ちょっと忘れ物してさー、教室に戻って来たとこ。他の奴らは外で
待ってる」
「あ、あのね、ちょっと時間もらってもいいかなっ………?」
朝陽くんは、きょとんとしながらも「いいよ」と返事してくれた。
───誰もいない教室は、がらんとしている。
午前中、たくさんの生徒の体温で熱をもっていたのが嘘みたい。
窓から見える桜の花弁は、はらはらと雨のように落ちていく。
「で、なぁに? 川高、話しって?」
「あ、じ、自己紹介のとき、私を助けてくれて、ありがとう」
「そんなのお礼のうちに入らないって。ただちょっとフォローしただけ」
白い歯を見せて笑う“あーくん”の笑顔は、昔とちっとも変わらない。
ドキドキドキドキ。
「そ、それでね、もう一つ言いたいことがあって───、」