ニーナが気付いていなかったのは、ジョンの嫌悪感が彼女にではなくジュ氏に 向けられていたということだ。

ニーナはどういうわけか喪失感を覚えたが、それも一瞬で消えたので 彼女自身はまったく気づかず、まだ含み笑いをしていた。

ジョンが本当に彼女を憎むことになれば、結果としてこれ以上嫌がらせをしてこないはずであり、大いに意味のあることなのだ。

「もちろん、いいわ」とニーナが頷く。 ジュ氏が 隣に座って欲しいというだけなら、ニーナは別に構わなかった。 もちろんセクハラなどしようものなら、 暴力で応酬するだろうが。

ニーナが立ち上がるとアダムズは不安そうな視線を投げかけながら、少し憤った声で抗議する。「いや、ここに座っていなさい。 なんであいつの隣なんかに行くんだ?」

15億円の投資を女の子の処女性で買い取る必要があるというなら、そんなチャンスは放棄して諦めた方がましというものだ。

「アダムズ!」 アダムズの隣に座っていたウィルソンが猛然と彼を睨みつける。 「ジュさん がニーナに隣に座るようにと仰ったとき、彼女は自分で同意したじゃないか。 なのに、どうして止めだてするんだ? 誰に向かって異議を唱えているんだね?」

15億手に入るんだぞ、要らないのか? 要らないというなら好きにしたらいいが、 俺はどんな手を使っても手に入れるからな。彼は黙ってそう考えていた。

アダムズは激怒しており、胸がつかえるほど痛んだ。 けれども、会食者たちの気分を害してしまったら、皆それぞれ容赦なく仕返ししてくるであろうことはわかりきっているので、喧嘩を売るわけにもいかない。

反発した結果として自分の将来が台無しになるだけならばアダムズは一向に構わないのだが、 妻子のある身ではそういう訳にもいかないのだ。