死んだような沈黙が流れる。

ジェームズは不安のあまり箸から魚を落とし、 ミシェルはかつてないほど呆気にとられ、口に運びかけたアサリがお椀にポチャンと飛び込んだ。

落ち着いているのはジョンただ一人で、 彼はティッシュで口の角をそっと拭っていた。

「どうかしたの? 驚いたかしら?」 ニーナは無邪気に笑顔を向ける。

うまくいった! これで私をジョンとくっ付けようなんてもうしないわね。

「ニーナおばさん…… 違った…… 先輩、本当に結婚してるの?」 ジェームズは口ごもった。 まるで幽霊でも見たかのように 汗をダラダラかきながら、目の前で起きていることに対応しようとして見るからに四苦八苦している。

「そうよ。 もう結婚して二年になるわ」 ニーナが笑顔で頷く。 そしてミシェルの方に目をやると、彼女のぽかんと開いたままの口にカニの脚を放り込んだ。 「ミミ、ほらカニよ!」

「えっ、何? ああ、カニね……」 ミシェルはカニの脚をつまみながらモゴモゴ呟いた。 彼女は自分の過ちに気づき、うなだれて罪悪感に苛まれながらカニを飲み込む。

一方ジョンは椅子にもたれ掛かると、深みのある瞳でニーナをじっと眺め、 思わず馬鹿にせずにはいられなかった。「体も頭もおかしい上に、結婚指輪も買えない男と一緒に居て嬉しいってか? おまえのことは買いかぶりすぎていたみたいだ」

けれどもニーナは無視を決め込んだ。 何しろ夫の名前すら知らないのだ。 腹を立てる気にもならないと言うものだ。

一方、ジェームズはそれを聞いて驚いていた。 ジョンはニーナが結婚しているのを知っていたに決まっているからだ。 それなのにまだ追い回すつもりなのだろうか?