「その言い方に注意しろ……」
グレンは怒り狂っていた。

「まぁまぁ、こんな茶番はやめよう。 私たちは二人ともイザベラが無邪気で心優しい子だってわかっているじゃないか。イザベラのせいでジェームズ・シーが怒っているだって?今日またニーナに叩かれたというんだから、悪いのはイザベラじゃなくニーナに決まっている」

「そうよ、全部ニーナのせい」
イザベラは鼻をすすって立ち上がったが、怒り狂った父親と向き合うのは怖かったので母親の後ろに身を隠した。 そして、言いたいことはあったものの、彼の鋭い眼差しを見ると言葉を引っ込めた。

ジョンはニーナのことでチャン家との提携をキャンセルしたが、ニーナの方はそれに気づいていなかった。 彼女はいつものように授業に出席して、ミシェルと一緒に食堂に行き、アパートに戻るといま取り組んでいる事件の分析をしていた。

事件の経緯についてあらゆる可能性を検討するため頭を悩ませているところだったが、ちょうど何か閃いたときドアをノックする者があり、思考を邪魔されてしまった。

ニーナは壁全体を覆うようにカーテンを閉めると、ドアを開けるためにくるっと振り返った。

そしてドアを開けると、そこには黒いアイライナーを引いてガムを噛みながら陽気に口笛を吹く ジェームズの姿があった。まったく粋がったチンピラといった風情だ。

ジェームズは威厳のある男よりも、お茶目な不良に見られたいのだろう。

「先輩!」
ジェームズは詮索するように眉を上げ、優しい落ち着いた声で彼女に呼びかけた。

「どうやってここを見つけたの?」
ニーナは彼の趣味の悪い服を眺めながら嫌悪感を隠しもせずに尋ねる。バーで踊ってきたところなのだろうか?